筋肉の知識その2/興奮収縮連関/筋肉を緩めリラックスするヒント

筋肉の収縮の仕組み

筋肉の収縮の仕組みについて、
もう少し詳しくお話してみます。

我々が日常もっともお世話になる仕組みですので、そこを理解することが体を上手に使う上でのヒントになります。

前回お話ししたように、筋肉の収縮は最小単位の筋節(サルコメア)で行われていました。その際に重要な栄養として、カルシウムイオンとエネルギー源のATPが必要でした。

今回は、栄養とエネルギーを使って具体的に行われる収縮の仕組みをお話しします。

筋肉の収縮のしくみ

興奮収縮連関

筋肉の収縮を理解するうえでの考え方は、生物学や生理学の世界では「興奮収縮連関」として説明されます。

興奮収縮連関(こうふんしゅうしゅくれんかん、英:excitation-contraction coupling;ECC)とは生理的に発生する筋収縮において認められる細胞膜の電気変異から収縮に至るまでの一連の過程。興奮収縮連関は骨格筋、心筋、平滑筋のいずれにおいても細胞内Ca2+濃度に依存する。骨格筋や心筋では活動電位が細胞膜より横行小管を介して筋小胞体へ至り、筋小胞体からCa2+の放出を引き起こす。これにより細胞内Ca2+濃度が増加し、トロポニンとCa2+が結合し、トロポニンにアロステリックな変化が生じる。この変化によりトロポミオシンが動き、ミオシンの作用部位が露出する。これによりミオシンとアクチンが反応して筋収縮が引き起こされる。Ca2+が正常値まで低下するとトロポニンとCa2+の結合が解除され、連鎖的に筋収縮は終了する。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

 

聞きなれない言葉がたくさん出てくるので、とても難しく感じると思いますが、この事実を我々はどう日常に生かせばよいのでしょうか?

前回お話しした筋節という筋肉の最小単位を思い出してみましょう。その実際の動きを更に具体的に理解できれば、日常に生かすヒントが見えてきます。

筋肉の収縮の主役/アクチンとミオシン

ミオシンのその両端はゴルフクラブのヘッドのような形をしていて、そのヘッドが動くように作られています。しかもそのヘッドには特定の部位と結合する働きがあります。

アクチンは、らせん状の細い線維上に、ミオシンのヘッドとくっつくことが出来る結合部をもっています。この結合部は開いたり閉じたりする構造になっています。

ミオシンは、このヘッドをアクチンとの結合部にくっつけ、手繰り寄せるように動かすことでアクチンを引き寄せます。

この一連の動作において、カルシウムイオンとATPが使われます。

筋節の収縮/ミオシンとアクチンの滑り込み

筋肉の動きは、伸びたり縮んだりするということですが、筋節がその長さを変えることで筋肉の伸縮が表現されます。

筋肉が縮むという時に、ミクロの世界では、一体どのようなことが起きているのでしょうか?

筋節が縮むという流れ

  1. 収縮の命令が神経伝達により筋線維に届く
  2. 筋線維にある筋小胞体からカルシウムイオンが放出される
  3. カルシウムイオンがアクチン上にある結合部の扉を開ける
  4. ミオシンがヘッドを結合部にくっつける
  5. ATPを使いミオシンのヘッドがアクチンを手繰り寄せるように動く
  6. ミオシンはATPを使いヘッドの角度を戻し、その結合部をはずす
  7. 更にアクチンを手繰り寄せるように次の結合部にヘッドをつける
  8. この繰り返しにより筋節の収縮が進む

一方、収縮をやめるといった時には、

筋節が緩むという流れ

  1. 収縮の命令がなくなる
  2. 筋小胞体からカルシウムイオン回収物質が出る。(Ca-ATPase)
  3. カルシウムイオンが筋小胞体に回収され、アクチン上の結合部が閉じる
  4. ミオシンとアクチンが離れる
  5. 筋節の収縮が終わる

筋肉が緩むということの意味

さて、いかがでしたでしょうか?

筋肉の収縮は理解できましたでしょうか?

筋肉が縮むのは分かったけど、
どうやって筋肉を伸ばすのかしら?

そうですね!

筋肉は、縮むのをやめることしか命令としては行っていないんですね。

筋肉を伸ばす機序に関しては、
また改めてご説明します。

この一連の仕組みで理解すべきことは、

筋肉を緩める = 筋肉を縮めない

ということなんです。

皆さんが日常で困ることは、

  • どうすればリラックスできるのか?
  • どうしたら筋肉の緊張を減らせるのか?

ということですよね。

〇興奮収縮連関という言葉が出てきましたが、
×興奮伸縮連関ではありません。

筋肉を緩める命令は、出せないんです。

人間は、体をゆるめたり、リラックスするには、「筋肉を緩める」という命令ではなく、「筋肉を縮める」という命令を出さないということが必要なのです。

 

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